台風のせいで明日から天気が悪くなるみたいですが、今年は完全に夏が終わる前にもう一度海に行こうと企てています。ちなみ私のおすすめは、播磨湾(播磨マリーナ)です。
さて、前回の続きということで、日本人である田中さんと韓国人である趙さんが婚姻した場合に、夫婦が同じ氏(姓)を称することは出きるのか否かという点について書いてみたいと思います。
結論からいいますと、田中さんが、「趙」という氏に変更することによって、夫婦で同じ「趙」を名乗ることができます。
まず、前提として、韓国人の趙さんの「姓」を変えることはできません。その理由は、韓国の法律には、子の福祉のために子の「姓」を変更する要件は定められていますが、婚姻によって、「姓」を変更する要件は定められていないからです(予定されていないからです)。
ということで、田中さんが「趙」に氏を変更する場合について書きます。
日本の戸籍法107条1項は、次のように規定しています。
「やむを得ない事由によって氏を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない」
このような定めがあるため、韓国とは異なり、日本人は、やむを得ない事由があれば、家庭裁判所の許可を得て、「氏」を変更することができるのがわかります。
さらに同法107条2項は、次のように規定しています。
「外国人と婚姻をした者がその氏を配偶者の称している氏に変更しようとするときは、その者は、その婚姻の日から6箇月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができる」
ということで、田中さんは、趙さんと婚姻した後6箇月以内であれば、家庭裁判所の許可を得ないで、市(区)役所等に届け出れば、「趙」の氏に変更することができます。
しかし、田中さんが「趙」の「氏」に変えるようなケースは少なく、実際には、田中さんが趙さんの使用している「通称名」に変更することが多いといえるでしょう。
「通称名」について書きだすと長くなりそうなので、次のように、在日韓国人が用いる日本風の名字ということにしておきます。なお、従前「通称名」は自由に設定・変更することができました。
例)
金さん → 金沢さん
李さん → 鈴木さん
朴さん → 西原さん
趙さん → 高木さん
※免許証等には、本名と通称名が併記されていたりします。
しかし、上記はあくまで「通称名」ですので、戸籍法107条2項に定める外国人配偶者の「氏」には該当しないことから、同法同項に基づいて、日本人は、外国人配偶者の「通称名」に「氏」を変することはできません。
そこで、上記の例で、趙さんの「通称名」が「吉田」で、田中さんが趙さんの「通称名」である「吉田」に「氏」を変更しようとするときは、婚姻を継続するうえでやむを得ない事由があるとして、戸籍法107条1項に基づき、家庭裁判所に「氏の変更の申立」を行うことになります。これが認められた場合に交付される審判書等を市(区)役所等に提出することによって、田中さんは晴れて、吉田さんとなることができます。
判例では、在日在日韓国人夫との婚姻に際し、氏を夫の氏に変更した妻が、実生活上、離婚後も継続して夫の通称名を使用していたケースについて、戸籍法107条1項のやむを得ない事由があると判断しています。