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2016年8月1日国際私法

婚姻に伴って氏を変えるのは変?・・・③

バタバタしてすっかり放置してしまいましたが、1・5ケ月ぶりに更新しようと思います。

 

それでは、婚姻に伴う氏の変更シリーズ3回目ということで、シンプルに、日本人と韓国人が結婚した場合の夫婦の氏(姓)がどうなるかについて、書いてみたいと思います。

 

前回お話したとおり、日本人同士の婚姻の場合は民法750条により、夫又は妻の「氏」を称することになりますが、日本人と韓国人が婚姻した場合は、国際私法により指定された準拠法に基づいてその「氏」が決定されることになります(国際私法・準拠法については過去記事で確認して下さい。)。

 

しかし、日本の国際私法には「氏」に関する規定がなく、また、日本では、「氏」は人格権に関するものであると考えられているため、本人の本国法を準拠法として処理するのが戸籍実務です。すなわち、日本人の「氏」は日本法により、韓国人の「氏(韓国では姓)」は韓国法によることになります。

韓国法には、日本民法のような婚姻に伴って夫又は妻いずれかの氏を称するとする規定がないため、氏は婚姻によって変わることはありません(韓国は姓不変の原則を採用している)。

したがって、田中さん(日本人)と趙さん(韓国人)が婚姻した場合、田中さんは「田中」又は「趙」のいずれかを選択することになり、趙さんはそのまま「趙」の氏を称するものと考えられますが、実際には違います。

 

その理由は、日本の戸籍実務が、外国人に日本の戸籍上の「氏」を認めていないからです。少しわかりにくいかも知れませんが、上記の趙さんの「趙」は、確かに氏(姓)なのですが、韓国人である趙さんには、日本の戸籍が編製されないことから、そもそも日本民法・戸籍法上の「氏」を認めないといったところでしょうか(表現に少し誤りがあるかも知れませんが、なるべく分かりやすくということでお許し下さい)。

 

つまり、田中さんは婚姻に伴って「趙」を選択することはできません。

 

ですので、日本で生まれ育ち、外国に居住したことが無い日本の方は、少し違和感を覚えるでしょうが、以上のように、婚姻したからといって、必ずしも夫婦の「氏」が同じになるということはないのです。日本では、夫婦の「氏」が同じになることで婚姻の事実を強く認識するようになったという話をよく聞きますが、外国人と結婚した場合は、一筋縄ではいきません。

 

それでは、日本人と韓国人が婚姻した場合、夫婦の氏を同じにすることはできないのでしょうか。

 

次回は、この点を見ていきたいと思います。