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2016年10月21日未分類

家族関係の登録等に関する法第14条第1項の一部違憲決定・・・①

引越し等々でバタバタしていて、いつものことですが更新が遅れました。

 

今日は、在日韓国人にも若干影響のある韓国憲法裁判所の決定概要を掲載したいと思います(宣告日は、2016年6月30日)。

内容は、家族関係の登録等に関する法律第14条1第1項が、本人の兄弟姉妹にも、本人の委任なしに基本証明書をはじめとする各種証明書の発給を行っていたことについて、これが違憲であるか否かといったものです。

 

1.事件概要

請求人は、2013年9月12日頃、情報公開請求の手続きを介して、異父兄弟姉妹が2013 年1月21日、請求人の家族関係証明書と婚姻関係証明書の発給を受けていたことを知った。これに対して請求人は、2013年11月18日、国選代理人選任申請をし、2015年9月11日、家族関係登録簿等の記録事項に関する証明書の交付請求権者を規定した「家族関係の登録等に関する法律」第14条第1項本文中「兄弟姉妹」に異父又は異腹の兄弟姉妹が含まれているものと解釈する限り、憲法に違反すると主張して、この事件の憲法訴願審判を請求した。

 

 

2.審判対象

請求人は、請求の趣旨を「家族関係の登録等に関する法律」第14条第1項本文中「兄弟姉妹」に異父又は異腹兄弟姉妹が含まれているものと解釈する限り、憲法に違反するという形式で記載している。

ところで、請求人のこのような主張は、異父又は異腹兄弟姉妹が「兄弟姉妹」に当然含まれる前提の下、上記の条項が兄弟姉妹にまで家族関係登録簿等の記録事項に関する証明書の交付請求権を付与することは違憲であるといった主張と見ることができる。

このため、この事件の審判対象は「家族関係の登録等に関する法律」(以下「家族関係登録法」という。)第14条第1項本文中「兄弟姉妹」の部分(以下「この事件の法律条項」という。)が請求人の基本権を侵害しているか否かである。

[審判対象条項]

家族関係の登録等に関する法律(2007年5月17日法律第8435号で制定されたもの)

第14条(証明書の交付等)①本人または配偶者、直系血族、兄弟姉妹(以下この条では、「本人等」という。)は、第15条に規定された登録簿等の記録事項について発給することができる証明書の交付を請求することができ、本人等の代理人が請求する場合には、本人等の委任を受けなければならない。

 

 

3.決定注文

「家族関係の登録等に関する法律」(2007年5 17.法律第8435号で制定されたもの)第14条第1項本文中「兄弟姉妹」の部分は、憲法に違反する。

 

 

4.理由の要旨

この事件の法律条項は、個人情報が収録された家族関係登録法上の各種証明書を、本人の同意なく兄弟姉妹が発給を受けることができることとすることは、個人情報の自己決定権を制限することである。

この事件の法律条項は、本人が自らの証明書の発給を受けにくい場合、兄弟姉妹を介して簡便に証明書の発給をうけることができるようにし、親族・相続等に関連する資料を収集しようとする兄弟姉妹が、本人の証明書の簡便な発給をうけることができるようにするためのものである。

家族間の信頼と絆に基づいて、特別な制限なしに兄弟姉妹に証明書の発行請求権を付与することは、これらの目的を達成するための適切な手段となる。

家族関係登録法上の各種証明書には、本人の住民登録番号等の個人識別情報だけでなく、離婚、離縁、性転換等に関する繊細な情報が記載される。このような情報が流出したり、乱用されたりした場合、主体に加わるダメージは大きいので、証明書の交付請求権者の範囲は、可能な限り縮小しなければならない。これは、家族の構成員中、一方に交付請求権を付与する場合も同様である。

兄弟姉妹の間の結合と信頼は、場合によっては夫婦関係や親・子の間のそれに比べ弱いかもしれない。兄弟姉妹は、いつも利害関係を共にするのではないだけでなく、例えば相続問題等の対立する利害関係の中で、お互いに反目したりする。このような場合、兄弟姉妹が、本人に対する個人情報を乱用または流出する可能性はいくらでもある。

ところで、この事件の法律条項は家族関係登録法上の各種証明書発給において、兄弟姉妹に対して、情報の主体である本人とほぼ同じ地位を付与する。すなわち、兄弟姉妹は、本人と関連するすべての証明書の発給をうけることができ、記録事項すべてが記載された証明書の発給をうけることができる。これは、証明書の交付請求権者の範囲を必要最小限に限定したものと見ることができない。

家族関係登録法は、この事件の法律条項がなくても、本人と兄弟姉妹の便益を達成するための手段を備えている。本人は、インターネットを利用したり、委任を介して各種証明書の発給をうけることができるので、兄弟姉妹を介して証明書の発給を受ける必要性が大きいとは言えない。また、家族関係登録法第14条第1項ただし書各号は、一定の場合には、第3者も各種証明書の交付を請求することができると規定しているので、兄弟姉妹は、これにより、本人の各種証明書を十分に受け取ることができる。

 

このため、この事件の法律条項は過剰禁止の原則に違反して、請求人の個人情報の自己決定権を侵害する。

 

次回は、反対の裁判官の意見を掲載したいと思います。