相続順位 | 配偶者のある場合(割合) | 配偶者のない場合 |
---|---|---|
第1順位 | 直系卑属と配偶者(1:1.5) | 直系卑属 |
第2順位 | 直系尊属と配偶者(1:1.5) | 直系尊属 |
第3順位 | 配偶者(1) | 兄弟姉妹 |
第4順位 | 4親等以内の親族 |
上述したとおり、遺産分割協議は、相続人全員で行う必要があるため、相続人を一人でも欠いた状態で行った遺産分割協議は無効となります。例えば、父親が亡くなったとして、その相続人が妻・長男・次男・行方不明になっている長女の4名である場合に、連絡のとれない長女を除いて行った妻・長男・次男の間の遺産分割協議は無効となり、仮に不動産などの名義をいったん上記遺産分割協議に基づいて取得したとしても、これも原則的に無効となります。
そこで、相続人全員による協議を行うためにも、法定相続人の特定は非常に重要です。日本法によれば相続人とならない者であっても、次の者は韓国法によれば相続人となるので、特に注意が必要です。
日本民法では、被相続人の子が相続開始前に死亡したとき、相続欠格者となったとき及び、廃除されたときは、その者の子がこれを代襲して相続人となり、さらに代襲者が相続開始前に死亡したとき、相続欠格者となったとき及び、廃除されたときも、その者の子は同様に代襲相続人になるとされています(日民887条2項、3項)。しかし、韓国民法では、相続開始前に死亡した又は欠格者となった子又は兄弟姉妹の子のみではなく、配偶者にも代襲相続権を認めています。
ところで、日本人の相続、在日朝鮮韓国人の相続を問わず、「私は相続放棄しました」、「相続放棄します」といわれる相続人が多いのですが、「相続放棄」は、単に相続放棄をすると宣言すればよいものではありません。また、他の特定の相続人に相続させるため、自分は一切遺産を承継しないといった内容の遺産分割協議書にサインしたとしても、これも「相続放棄」したことにはなりませんので注意が必要です。
日本人の相続に関しては、日本の家庭裁判所に、在日朝鮮韓国人の場合は日本の家庭裁判所又は韓国の家庭法院に、相続の開始のあったことを知った日から3か月以内に、それぞれ相続放棄する旨を申述(申告)しなければなりません。
日本法では、第1順位の相続人は「子」であるとされています(日民887条1項)。そのため、例えば、被相続人を父とする相続が開始した場合、相続人全員である子2名が相続放棄をすると、子2名は初めから相続人ではなかったことになると解されているため、次順位相続人として直系尊属が相続人となります(日民889条1項)。しかし、韓国法における第1順位の相続人は「直系卑属」とされているので、相続人全員である子2名が相続放棄をした場合でも、さらにその者らに子があると、その子が第1順位の相続人となります 。したがって、実務上子全員が相続放棄をするに際しては、孫の相続放棄の要否を検討しなければなりません。
相続放棄される方により異なりますが、概ね 遺産分割協議の(3)の範囲で足るものと考えていただければ問題ありません。