外務省の在留外国人の資格別統計上、圧倒的な割合を占める在日朝鮮韓国人ですが、その数は年々減少しており、その要因の一つとして帰化があげられます。
帰化とは、国籍法5条以下の要件を満たした外国人が、法務大臣の許可を得て日本国籍を取得することをいいますが、特別永住者である在日朝鮮韓国人も、要件を満たせば帰化をすることができます。
◆国籍法4条
日本国民でない者(以下「外国人」という。)は、帰化によって、日本の国籍を取得することができる。
◆国籍法5条
法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。
1 引き続き5年以上日本に住所を有すること。
2 20歳以上で本国法によって行為能力を有すること。
3 素行が善良であること。
4 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によって生計を営むことができること。
5 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によってその国籍を失うべきこと。
6 日本国憲法施行の日以降において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。
日本人の出生、婚姻、離婚、死亡等に伴う身分関係は、戸籍法に基づいて編製された戸籍の記載によって確認することができ、また、戸籍には、配偶者や子など自身の家族も登載されています。
しかし、在日朝鮮韓国人については、戸籍法の適用はあるものの、上記のような戸籍は編製されませんし、仮に日本人と婚姻した場合であっても、日本人配偶者の戸籍に、「(朝鮮)韓国籍〇〇〇と婚姻」と記載されるにとどまります。
また、日本人配偶者との間に子を授かったとしても、子は一定期間二重国籍を有することから、日本人配偶者を筆頭者とする戸籍に入籍することになるため(戸籍が編製されるため)、結果として戸籍に登載されていないのは、在日朝鮮韓国人のみとなります。このような戸籍の記載上の問題の解消が帰化の動機となります。
日本に定住する在日朝鮮韓国人にとっても、生活に直結する政治に関心があるのは至極当然でありますが、日本国民たる住民に限り地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有するものとした地方自治法11条、18条、公職選挙法9条2項は、憲法15条1項、93条2項に違反しないとした最高裁判例があり、在日朝鮮韓国人には選挙権が付与されていないことから、これが帰化の動機となります。
また、選挙権年齢を18歳以上とする公職選挙法の改正によって、高校在学中に投票に行くことになる可能性があることも大きな要因となりそうです。
東京都が、管理職に昇任するための資格要件として、日本の国籍を有することを定めた措置が労働基準法3条、憲法14条1項に違反しないとした最高裁判例があり、陸上自衛隊や警察官などの国家公務員や地方の上級公務員への就職が、帰化の動機となります。
現在日本に居住する在日朝鮮韓国人のほとんどは、日本で生まれ育った者であるため、民族学校に通っていたり、語学留学にいったりしていた場合は別として、母国語である朝鮮語又は韓国語を話すことのできる者は思いのほか少数です。このように母国である朝鮮韓国と関係の薄い在日朝鮮韓国人は、今後も日本で生活することがごく自然であることから、あえて朝鮮籍・韓国籍を保持し続ける必要がないといったことも帰化の動機となります。
その他、帰化の要件を緩和するものとして、国籍法には以下が定められています。
◆国籍法6条
次の各号の一に該当する外国人で現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その者が前条1項1号に掲げる条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
1 日本国民であった者の子(養子を除く)で引き続き3年以上日本に住所又は居所を有するもの。
2 日本で生まれた者で引き続き3年以上日本に住所若しくは居所を有し、又はその父若しくは母(養父母を除く)が日本で生まれたもの。
3 引き続き10年以上日本に居所を有する者。
◆第7条 日本国民の配偶者たる外国人で引き続き3年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その者が第5条1項1号及び2号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から3年を経過し、かつ、引き続き1年以上日本に住所を有するものについても、同様とする。
◆第8条
次の各号の一に該当する外国人については、法務大臣は、その者が5条1項1号、2号及び4号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
1 日本国民の子(養子を除く)で日本に住所を有するもの。
2 日本国民の養子で引き続き1年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時本国法により未成年であったもの。
3 日本の国籍を失った者(日本に帰化した後日本の国籍を失った者を除く)で日本に住所を有するもの
4 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き3年以上日本に住所を有するもの。
◆第9条
日本に特別の功労のある外国人については、法務大臣は、5条1項の規定にかかわらず、国会の承認を得て、その帰化を許可することができる。
しかし、上記の要件を満たしていたとしても、法務大臣は「帰化を許可しなければならない」わけではなく、あくまで「許可することができる」とされていることにとどまりますので、必ず帰化申請をすれば許可されるというわけではないことにご注意ください。
帰化申請が許可されなかった比較的新しいものとして、大韓民国の国籍を有する母子がした各帰化申請に対する不許可処分の各取消請求につき、法務大臣は、国籍法所定の帰化の条件を備える外国人についても、なお、その帰化を許可するか否かにつき、国際情勢、外交関係その他の政治的な事項をも考慮して自由にこれを決することができる広範な裁量を有しているとした上、母につき、国籍法5条1項各号の条件を備えるとしても、法務大臣が、様々な事情を考慮して、今しばらくその生活状況を観察する必要があると判断することは、裁量権の範囲を逸脱し又は濫用した違法があるということはできないとし、子については、母に対して帰化が許可されない以上、国籍法5条1項2号、8条1号所定の条件を欠くとして、上記各請求をいずれも棄却した判例があります。
当事務所においては、初回の面談時に、帰化申請が許可されない可能性があるか否かの判断をさせていただいておりますので、お気軽にご相談下さい。
(1)帰化許可申請書
(2)親族の概要書
(3)履歴書
(4)生計の概要書
(5)事業の概要書 ※自営業者又は法人役員のみ作成必要
(6)住宅付近の略図
(1)事務所面談
(2)書類作成・必要書類収集
(3)帰化申請
(4)法務局における担当者との面談
(5)法務大臣による帰化許可・不許可
※手続期間は概ね次のとおりですが、事案によって、異なります。
(1)~(3)は、1ヶ月から3ヶ月を要します。
(3)~(4)は、2ヶ月から3ヶ月を要します。
(4)~(5)は、5ヶ月から6ヶ月を要します。
(1)~(5)は、8ヶ月から12ヶ月を要します。